いま振り返るとスバリ岳 西尾根主稜はとても良いルートだった。中間部の緩傾斜帯ではロープが不要で歩くだけだが、それを除いても13ピッチというスケールがある。残置支点が少なくクラックが豊富なのでオールナチュプロで登ることができる。P4手前や上部の岩峰帯は傾斜が強く、岩質が硬いのでV-級程度のフリークライミングを快適に楽しめる。アプローチが遠いことと水場の問題はあるが、夏期・冬期いずれに登るにしても、剱岳のチンネ左稜線や剱尾根に比肩しうる好ルートだと思う。





今週末の土曜日は瑞牆山の不動沢 屏風岩へ行き、日曜日は甲府幕岩へ行ってフリークライミングをしてきた。そのときの成果は以下の通り。当初の目標だった百獣の王 (5.11c)とア・プリオリ (5.11a)を完登できたのは良かった。次に不動沢を訪れるときはアルカイック・スマイル (5.12a)に挑戦してみたい。
5.12-のフェースであればワンデイで完登はできる。5.11-のクラックもほぼレッドポイントできる。これはもう間違いない。しかしそれ以上のグレードを登るとなるとまったく実力不足で、たとえ通い詰めたとしても5.13を登れるかは疑問を感じる。なにしろ5.11のルートをほとんどオンサイトできない。外岩でのスメアリングの感覚があまりにわかっていないので、5.13のフェースを完登するよりも5.12のクラックを完登する方にまだ可能性を感じるほどだ。
【不動沢 屏風岩】
百獣の王 (5.11c)=2便目でレッドポイント
ア・プリオリ (5.11a)=1年半ぶりにトライして、通算4便目でレッドポイント
寒々ルート 2p (5.7)=1p目と2p目をリードでオンサイト
不動沢愛好会ルート1p目(5.10a)=フォローで登った。2p目はクラックに草が生えていて、岩肌も土まみれだったので登るのはやめにした
JECCルート (5.11a)=テンションをかけつつ百獣の王終了点まで登って降りてきた。このルートはカムをフルで2セット持っていってもまだ足りない
【甲府幕岩】
HIVE (5.10a)=再登
アフリカ象が好き (5.12a)=5便目でレッドポイント
岳でキョン (5.11c)=帰り際にトライしたが、指がよれていてトップアウトできず
5月25日に瑞牆山 十一面岩正面壁のベルジュエールを登ってきた。トラッドの練習を少しずつ重ねてきて、思い出すのもみじめな敗退を経験した1年半前とは比べ物にならないほどの岩場での対応力を身に着けてきた自負があったから、当然のように全ピッチをフリー・テンションなしで登りきるつもりだった。1ピッチ目5.11bの核心部でいきなりテンションを1回かけてしまったのは痛恨の極みという他ない。しかし、それ以降のピッチではテンションをかけることなく十一面岩の頂上に立ち、取り付きに戻ったあとに1ピッチ目だけあらためて再トライしてレッドポイントしたので、いちおう目標を達成できた。
翌5月26日に大ヤスリ岩へ行ってきた。マルチピッチのルートを継続登攀するつもりで、まず夢のカリフォルニア(全3ピッチ)を登った。続いてその隣りにあるトリックスター(全3ピッチ)に取り付いたが、2ピッチ目ルート上の岩壁にイワタケがびっしりと密生しており、とてもフリーで登れる気がしなかったのでおとなしく敗退した。
瑞牆山における次の大きな目標は、カンマンボロンの高難度マルチルート・太陽の登、そして十一面岩正面壁の達磨バムとなるだろうが、これらを登りきるためには花崗岩でいっそう強くなる必要があるだろう。

今年はトラッドクライミングを頑張ろうと思い、カムやシューズを買い足したら相当な散財になってしまった。海外のオンラインショップで購入することで、国内で買うよりも2割以上安くすむので助かっている。
ジムで試し履きをしたところ、スメアリングがすばらしく良く効くことに感動して購入を決意した。かなり高価なので外岩のフェース専用で使う予定。ボルダリングジムや無雪期のアルパインクライミングでは、手元にある使い古したハイアングルをリソールしつつ乗り切るつもり。
TCプロはすでに一足持っているのだが、予備用に買い足した。こちらは外岩のクラック専用で使う予定。来年まで使わずに大事に保管しておくつもり。
本格的にクラックをやるためにはカムが最低2セット必要ということなので、追加で#0.3と#4を購入した。また、ワイドクラックにトライするためにサイズ#6を購入した。サイズ#1, #2, #3は手元にまだ1セットしかないが、カムは高価なのでなかなか買う勇気が出ない。
終了点構築、セルフビレイ、肩がらみでのビレイ、ルーファイミスの際の下降など、環付きカラビナは意外と出番が多い。衝立岩ダイレクトカンテで環付きカラビナを1つ残置してしまったので、予備用もふくめて3本買い足した。その他、メルカリなどでワイヤーゲートカラビナを10数本購入した。アルパインクライミングではワイヤーゲートじゃないと重くてやってられねえよ・・・
冬期クライミングに耽っていたこの5ヶ月間で新品のアイゼンの爪があっという間に擦り減ってしまったので、次のシーズンではせめてフロントポイントだけは新品で登りたいと思い購入した。これは4本セットだから、摩耗を気にすることなく取っ替え引っ替えできて良いと思う。
アイゼンのメンテナンスをまったくせずに毎週冬山に行っていたら、フロントポイントを固定するネジがいつの間にか緩んでいたことに気づいた。山行中に外れるリスクを考慮して、次シーズンから冬山では小型のスパナと六角レンチを携行することにしたい。
これらのガイドブックはすでに持っているのだが、外岩で本を広げたり風呂の中で読んでいるうちにぼろぼろになってしまった。改訂版が出たということもあり、この際買い替えることにした。改版で追加された不帰2峰西壁や有明山の岩場はたいへん興味深い。
先週のダイレクトカンテルート登攀のときに起きた取るに足りない珍事を書き留めておこうと思う。2ピッチ目のリードを終えて終了点のピナクルテラスでフォロワーをビレイしている最中、唐突に便意を催してきて、俺はどうしても我慢できなくなってきた。とはいえ排便は容易なことではない。なにしろ衝立岩のおどろおどろしい大ハング帯を真上にひかえた断崖絶壁にいるので、もしセルフビレイを外してしまえば、眼下に広がる数百m下の衝立スラブめがけて真っ逆さまに墜落しかねない。そして深刻な問題がもうひとつあって、それはうんちを置くスペースがほとんどないということなのだ。テラスという名称は名ばかりで、この終了点は人ひとりがやっと両足で立てるほどのスペースしかない。空中に尻を向けてうんちを真下に投下する方法も思いついたが、おそらくフォロワーに直撃してたいへんなことになるだろう。俺は当然ダイレクトカンテを完登するつもりでいたから、うんち敗退などという愚にもつかない失態を犯すわけにはいかなかった。
しばらく逡巡して思い悩んだ末、俺は決意を振り絞って行動に移すことにした。さながら、7年間もの永きにわたってサナトリウムに沈殿していた「魔の山」のハンス・カストルプが、ひとたび思い立つや軍に入隊すべく颯爽と療養所を飛び出していったように。俺はまず120cmスリングで簡易チェストハーネスを作り、これで終了点にビレイを取る。そして腰のハーネスを脱ぎ、岩壁に対して尻を向けて排便をするのだ。これは決して容易なことではない。数百mの高さを誇る朽ちかけた垂壁のど真ん中で岩壁に対して背を向け、頼りないチェストハーネスに体重を預けた状態でわずか10cm四方のエリアにピンポイントでうんちをするというのだから、これは経験を積んだアルパインクライマーにしかできない不毛な芸当にはちがいない。俺はそれを見事にやってのけ、あとは尻を拭くだけでさしたる困難はもはや残されていないと思われた。ところが、あろうことかトイレットペーパーを誤ってまるごと手から落としてしまったのだ。それは衝立スラブへまっすぐ落下していくかと思いきや、数十m落ちていくうちに巻き取られたペーパーが自然とほどかれ、しばらくその高度を保ちながらうるわしく風にたなびいていた。そして、晴天時の上昇気流にあおられるや、まるで峻しい滝を遡上していく鯉のように、身体をうねらせながら力強く上空へと舞い上がり、頭上の大ハングすら越えてはるか紺碧の彼方へと波立つように飛翔していったのだった。いや、そんなことはどうでもいい。尻に付着したうんちは、いまやまったく別の手立てで拭いさらねばならなかった。苦渋の選択として、ピナクルテラスに転がっているわずかな小石と枯れ草を使ってことなきを得たのだった。

ピナクルテラスにて
5月18日-19日に小川山へフリークライミングしに行った。そのときの成果は以下の通り。イムジン河をワンデイで完登した。トラッドの最高グレードを5.11dに更新できた。とはいえ兄岩でのクライミングは苦戦させられた。花崗岩はクラックだけでなくフェースも難しい! これはだいぶ修行が必要だ
【殿様岩】
イムジン河 (5.11d)=3便目でレッドポイント
予期せぬプレゼント (5.10a)=オンサイト
【兄岩】
ピクニクラ (5.10c)=オンサイト
めおとクラック (5.11d)=1年ぶりにトライするが、トップアウトできず途中敗退。昨年はテンションかけつつもムーブをばらしてトップアウトできたのになんでや・・・
森の緑にかこまれて (5.11b)=3年ぶりにトライしてレッドポイント
アルパイン少女マミ (5.12a)=トップアウトできず途中敗退
