ここ最近は不可抗力のトラブルに巻き込まれてばかりだった。
まず8月11日の錫杖岳クライミングの帰りに体調を崩し、なにかおかしいと思って新型コロナ抗原検査キットを使ったところ陽性だった。激しい咳と喉の痛みがなかなか治らず、体調回復に一週間要した。おかげで貴重なお盆休みがまるごとつぶれ、クライミングに行くことができなかった。錫杖岳に同行したパートナーがマスクもしないで車中・テント内問わず咳を連発していたから、かれからうつされたことに疑う余地はない。
8月19日に小川山へクライミングしに行った夜、車の中で寝ていたところ虫が右耳の奥に入り込んで取り出せなくなった。翌日の早朝に慌てて救急外来へ行ったところ、適切な器具がなくて取り出せないので耳鼻科で受診してくれとのことだった。日曜日なので耳鼻科はどこも休診しているじゃないかと俺が言うと、開院している病院はそっちで探してくれ、どこも休診しているなら月曜日に受診すればいいと医師は言う。救急外来対応の医師がなんの役にも立たないので正直呆れ果てた。耳の中の強烈な違和感と嫌悪感でクライミングどころではないので、けっきょくそのまま帰宅することにした。翌日に地元の耳鼻咽喉科へ行き、吸引機で虫を取ってもらった。
虫が耳の中に入ったときに車の中でばたばた身悶えしたものだから、そのときに誤って眼鏡を手で押しつけて壊してしまった。フレーム部分がちぎれて修理できそうにないばかりか、外れたレンズの片側が吹っ飛んでどこかへ行ってしまったものだから、眼鏡を新調する羽目になった。
そして今度は今朝がたに起きた車のパンクだ。木曽駒ヶ岳の沢登りからの帰り、下道を走行中にタイヤからボォンとものすごい音がして、次いで車がガタガタと揺れだした（タイヤのバーストだった）。保険会社に連絡して車をレッカーサービスで搬送してもらい、公共交通機関を使って帰宅することになった。すでに5万キロ近く走行しており、タイヤにひびが入っていたから、おそらく寿命なのだろう。タイヤ4本を新品へ交換することにしたが、交換代込みで総額約11万円かかるそうで気が滅入ってくる。とはいえ、パンクしたのが新宿虎ノ門駅の至近で、電車に乗って苦労せずに帰宅できたのは不幸中の幸いという他ない。車の搬送代や帰宅の交通費を保険会社がすべて補償してくれるので、帰りの高速代金がまるごと浮いたと考えることもできる。
そんなかんじでクライミングとは無関係のトラブルが続いてばかりだったが、危機を前にしたここぞとばかりの冷静さと、生来の愚にもつかない吝嗇を発揮して、幾多の困難をなんとかうまいこと切り抜けていったのだった。
