学祭が開かれるというので、「磁石で遊ぼう」という企画を研究室の皆で催したのだった。来訪してきた子供連れの家族に対し、俺はサポーターとして、研究室のメンバーが作った出し物の遊び方や、物理的な原理の解説に応じていた。その中で、とんでもない小学生男児に出会ったのである。
俺「電池と磁石を使って、こんなに簡単にモーターが作れるんだよ」
子「えっ、すごいっ、回ってる、なんでだろう」
俺「(あっつ!)これ、ずっと電流流してると熱くなるからね、気をつけよう」
子「えっ、なんで熱くなるんですか?」
俺「・・・それはね、電流をずっと流してると熱くなるんです」
子「へえ・・・じゃあ聞いていいですか!」
俺「ん?」
子「モーターがこれと同じ原理なら、モーターは発熱しないんですか?」
俺「それはね、・・・モーターはいろいろと工夫がしてあるんだね・・・」
子「あっ! きっとモーターに抵抗器をつけてあるんだ! だから発熱しないんじゃないかな」
俺「・・・たぶんそうだね(←モーターのことが分からない)」
俺「この銅の筒に磁石を入れると、磁石が筒の中をゆっくりと落ちるんですね~」
子「えっ、なんでっ、筒の内側が磁石になってるの?」
俺「ちがうんだね~、ほら、磁石を筒に出し入れすると、筒が磁石でないことは分かるんだ」
子「えっ、なにこれっ、どうなってるんだろう」
俺「これはね、物質というのは磁場の時間変化をすごく嫌うものなんです。だから銅のように電流が流れやすい物質は、自分に電流を流して、時間変化を打ち消すような磁場を作れるんだよ。磁場と電流は深く結びついてるんだね」
子「へえ~」
俺「アルミの円板の近くで磁石を動かすと、円板が回転するね、不思議でしょ~」
子「えー、なんでっ、これは磁石にくっつかないよなー、なんでだろう」
俺「ヒントはね、さっきやった銅の筒の実験だよ」
子「あっ、分かった! さっき言ってた、時間、時間磁場?時間変化! 磁場の時間変化を防ぐためにこうなってるんだ!」
子の父「えっ、どういうこと(困惑)」
子「だからー、磁石を動かすと磁場が変化するじゃん、その時間変化を打ち消すように、アルミが動いてってるっていうことだよ。ほら、磁石を動かすとその方向に動いてってるじゃん」
俺「大正解です(圧巻)」
子「あのーひとつ聞いていいですか」
俺「なに?」
子「水ってー、不純物含まないと電気流さないと聞いたんですが、不純物を含む普通の水なら電気流しますよね。じゃあ水の上で磁石を動かしたら、渦できますか?」
俺「・・・・それはね、ぼくにもすぐ答えることができません。ぜひ自分で試してみたらいいと思うよ(汗)」
その他、いろいろとかなり突っこんだ話をしたが、俺の解説には少々誤りもあったと思う。特に、蛇口から出る水に強い磁石を近づけると水が曲がるというのは、おそらくぼくの間違いです。静電気ならばたしかに水は曲がりますが、磁力で曲げるとなると、たとえネオマックス磁石であっても、難しいと思います。ごめんね。
・・・少年よ、ぼくは君のような子と話せてたいへん光栄に思うよ、冗談でなくほんとうに。