思ったこと、考えたこと。

日々思ったことや考えたことを日記代わりに綴っていきます。がんばります

石川達三「生きている兵隊」

石川達三「生きている兵隊」「武漢作戦」を読んだ。高校生の頃に石川達三の小説はいくつか読んだが、かれの代表作が未読だったのは当時の俺がいかに捻くれていたかを示しているようだ。

ガラス張りを輝かせてそびえ立つ壮麗な高層ビルディング街の郊外にあるHuawei武漢工場を俺が訪問したのは2019年のことだ。その80年前の1938年に、日本軍が武漢三鎮を陥とし、「東洋の盟主」としてその占領のもとに復興の大義を掲げていたという歴史的事実はいかにも不思議なことで、にわかに信じがたい時空的な超越を感じさせる。あるいはそれこそが歴史と呼ばれるもので、歴史に埋め込まれて時代に生きるわれわれは、ついに歴史に到達することはできないのかもしれない。

人間の手によって計算され、意匠をこらすことのできる、ゆるぎない建築物。夢幻のように捉えどころがなく、決して真実にたどりつくことのない、再構成しようとする意志がついに挫折しては後退を余儀なくされる歴史。*1