この2年間で甲斐駒ヶ岳周辺を中心に甲信の代表的なアルパインアイスルートをいくつか登ってきたが、ガイドやトポに書いてある総合グレードはあまり参考にならないように感じた。そこで、主観的ではあるが総合グレードを以下のように再整理してみた。ここではシングルピッチで登られる氷瀑は除くとして、アルパインクライミングやマルチピッチで登る氷瀑を対象にしている。それと、国内有数と言われるほどのあまりに難度の高いルートの登攀経験はないため、結果としてグレーディングがやや甘めになりがちなのはご容赦願いたい。
グレーディングの基準としては、まず①氷瀑自体の技術的難度、②氷瀑全体のスケールという2点が大きな要素を占める。氷瀑の傾斜が強くヴァーティカルに近かったり、ピッチを分けないと登れないほど氷瀑が大きければ難度は上がるだろう。一例として、塩沢右俣は技術的難度を考えると塩沢左俣よりも上になる。大武川 一ノ沢大滝の難度はそこまでではないが、ピッチ数を考えると篠沢七丈瀑よりも上のグレードになるはずだ。同様の理由で、滑滝沢と西坊主ノ沢は登攀スケールという点で黄蓮谷右俣や左俣よりも上になるだろう。グレードを決めるための補足的な要素として、③アプローチの負荷、④敗退の容易さも入る。これらの観点は、尾白川下流域の各氷瀑のグレードを下げ、黄蓮谷や尾白川本谷の各ルートのグレードを上げる要因となる。三峰川岳沢は全装をかついで大仙丈ヶ岳頂上まで突き上げなければいけないという点でかなり特殊で、それはこのルートを大幅に難しくしていると言ってよい。最後に⑤支点設置・ビレイの安定性という要素もわずかだがグレーディングに関わっている。支点の不確実性やビレイ時の安定性は登攀の困難度に直結するものだからだ。この点で野門沢 布引の滝は大武川 一ノ沢大滝よりも上であり、七丈ノ滝は夢のブライダルベールよりも上であると考える。
もちろん同じグレードの範疇内でも難易の差はあるわけで、以下のリストでは下にいくほど難しいことを表している。たとえば同じ【3級上】でも、尾白川下流域 岩間ルンゼよりも足尾渓谷 ウメコバ沢の方が総合的にやや難しいといえる。
【2級】
八ヶ岳 裏同心ルンゼ
【2級上】
八ヶ岳 ジョウゴ沢
【3級下】
尾白川下流域 ガンガノ沢
【3級】
八ヶ岳 峰ノ松目沢
尾白川下流域 平田ルンゼ
荒川出合3ルンゼ 右のナメ滝
【3級上】
尾白川下流域 岩間ルンゼ
八ヶ岳 広河原沢左俣
八ヶ岳 権現沢左俣
八ヶ岳 南沢大滝
二口渓谷 日陰磐司 左ルート
荒川出合2ルンゼ 正面大滝
足尾渓谷 ウメコバ沢
【4級下】
荒船山 相沢奥壁 エイプリルフールの滝
中千丈沢 Z
中千丈沢 一角獣
戸台川 舞姫の滝
大武川 篠沢七丈瀑
【4級】
錫杖岳前衛壁 3ルンゼ
谷川岳 一ノ倉沢 一ノ沢右壁左方ルンゼ
八ヶ岳 大同心大滝
尾勝谷 塩沢左俣
大武川 一ノ沢大滝
黄蓮谷右俣
二口渓谷 日陰磐司 右ルート
錫杖岳北東壁 グラスホッパー左ライン
黄蓮谷左俣
【4級上】
滑川 奥三ノ沢左俣
荒船山 昇天の氷柱
尾白川本谷 西坊主ノ沢
尾白川本谷 滑滝沢
女峰山北面 野門沢 布引の滝
尾勝谷 塩沢右俣
米子不動 アナコンダ
【5級下】
三峰川 岳沢
荒川出合3ルンゼ 夢のブライダルベール
【5級】
戸台川 七丈ノ滝
錫杖岳前衛壁 1ルンゼ
米子不動 夜叉





