2025/9/19-27にカナダのスコーミッシュでクライミングをしてきた。記録をまとめて共有することは国内有志のクライマーに役立つだろうし、来年には再度スコーミッシュを訪れたいと思っているのでその備忘録にもなるだろうと思う。登ったルートの記録は別にまとめてあるので、ここでは渡航前の各種手続きや岩場へのアクセス方法、生活、買い物などの情報について整理する。

■スコーミッシュの気候
スコーミッシュは温帯に属しているが、日本よりも高緯度帯にあるため気温はやや低い。今回滞在したのは9月下旬だが、体感ではだいたい小川山の10月中旬くらい。9月の平均最低気温は8-9 ℃で、特に朝は冷え込んでなかなか気温が上がらず、ダウンを着込んでいないと寒く感じるほど。日中の気温は快適で、クライミング時はTシャツ一枚でも問題なかった。
シーズンは7-8月のようだが、日が当たると暑すぎるかもしれない。7-9月に比較して、平年では10月から降水量が急激に増えており、秋口から天気が崩れがちになるようだ。実際に、帰国日の9月27日以降の週間天気予報はずっと雨だった。

■装備(ガチャ・ロープ等)
80mシングルロープを1本準備し、これをメインで使った。また、マルチピッチクライミング用に50mシングルロープ、50mダブルロープを各1本準備した。ガチャは二人で合わせてだいたい#0.2-#3を4セット、#4を3セット、#5と#6を各1セット、ナッツ1セットを持っていった。#6はけっきょく一度も使わなかった。
エリアにもよるが、ショートルートの場合、小川山や瑞牆山と比較してフィンガークラックの割合が高い。ナッツが絶対に必要というわけでもないが、スモールカムは多めに使うことになる。また、30m以上35m以下のショートルートがけっこうあるため、70mロープがあると良い。80mロープだと逆に長すぎる。
■岩質・グレード感
花崗岩。とにかくスメアリングしてシューズのフリクションに頼りながら登ることが多い。小川山や瑞牆山と比較すると、人気のある看板ルートのグレード感はやや甘いものもあり、比較的素直で登りやすいものが多い。人気でないルートはそこまで登っていないのでよくわからないが、トポで☆がついているものでもRクラスのルートがしれっとあったりするので注意が必要。
■eTA申請
カナダ入国前に事前に電子渡航認証 (eTA) の申請が必要。申請には7ドルかかり、web上で完結できる。承認後は自動的にパスポート番号に紐づけられるようで、渡航時に準備が必要な書類などはない。
■航空券・搭乗手続き
航空券はZip Airで予約した。手荷物の預け(30キロまで)や機内食はオプションで有料となっており、これらのオプション込みで往路は56,660円、復路は111,272円だった。復路の料金だけ高いのは週末だったからで、平日発の便なら往路と同じくらいの価格だった。機内持ち込みの荷物は7キロまでだが、これは厳密に守らなくてもなんとかなるようだ。往路では事前に重量検査を受けて200gほどオーバーしたが、何も言われなかった。カムなどのガチャ類を機内持ち込みすると成田国際空港の保安検査で引っかかり、ザックの中身をすべて出してチェックされた。おそらく大量の金属部品が怪しまれたのだろうと思う。復路ではガチャ類を預け荷物に入れたので、特にトラブルになることはなかった。
カナダの入国審査はパスポートのスキャンとチェックのみで、審査官による質問や会話はない。アメリカの入国審査は、入国目的や滞在中の住所を厳しく詰問されることで知られているが、カナダではそういうことはいっさいなかった。
■国際運転免許証
現地ではレンタカーを使う予定だったので、出発前に国内の運転免許センターに行って国際運転免許証を発行した。特に予約は不要だが、証明写真を事前に準備する必要がある。申請手数料は2,000円程度だった。
■外貨両替
成田国際空港の第1ターミナル北ウイングだと、保安検査前にあるGPAがもっともレートが良い。4万円をカナダドルに替えたが、帰国後に160ドル(約18,000円)余った。現地スーパーでの買い物はクレジットカードが使えるので、現金を使うのはキャンプ場での支払いとコインランドリー・シャワー室の利用のみ。
■レンタカー手配
バンクーバー国際空港にはいろいろなレンタカー会社があるが、見積額を比較してAlamoを使った。大手で評判が良く、特にトラブルもなかったのでこの選択は正解だったと思う。Alamoの公式サイトから事前予約し、現地でカード決済する。今回は9月19日-27日で小型SUV(ヒョンデ・Tucson)をレンタルしてトータル84,857円だった。レンタルの際にはデポジットとして400ドル余計に取られるが、後日の請求額は予約した通りの料金だった。返却時にはガソリンを満タンにしておくように求められるので、これが少し面倒くさい。
Tucsonは後部座席を倒すと車中泊ができるくらい荷室が広くて快適。二人で行くのであれば、どうせ後部座席には荷物しか置かないので、セダン車にすればもう少し安い価格ですんだかもしれない。
レンタカーを借りて空港から出発するときはともかく、空港へ戻ってレンタカーを返却する帰路の道順がわからず不安になるかもしれないが、空港へ向かう幹線道路上には"Car Rental Return"という標識がこまめに掲示されているので問題ない。案内の通りに車線にしたがって走っていれば、レンタカー返却口(出発地と同じ)に戻ることができる。

■アクセス
バンクーバー国際空港からスコーミッシュまでは車で約1時間30分かかる。しばらくバンクーバー市内を走ったあとに幹線道路のHighway99を経て、主要な岩場は幹線道路を降りてすぐのところにある。高速道路料金はかからない。
スコーミッシュには空港からバスでもアクセスできるようだが、詳細は調べていない。
■現地での宿泊(テント)
スコーミッシュ滞在中は、The Chief登山口の入口にあるStawamus Chief Provincial Park Campgroundでずっとテント泊していた。大きなテントサイトがたくさんあり、駐車場・水場・トイレが完備しているたいへん清潔なキャンプ場。1人1泊につき10ドルかかるので、今回は8泊で160ドルかかった。記入用紙に滞在日や車のナンバーなどを記載して、現金を黄色いボックスに投函する。切り離した用紙をテントサイトと車のダッシュボードに置く。

■食料・買い物
Save-On-FoodsやNesters Marketといったスーパーマーケットは街中にあり、キャンプ場から車で10分程度。歩いていける距離にはない。どちらの店舗も品揃え豊富で、クレジットカードに対応している。スーパーの駐車場から歩いていける範囲内にタイ料理屋、日本料理屋、マクドナルド、サブウェイといった外食もあったが、今回は使わなかった。
調理するためのガスカートリッジはClimb On Equipmentで購入した。ここはガチャ、ロープ、トポなどのクライミング・アウトドア関連品が充実している。
■アメニティ(洗濯・シャワー・スマホ充電など)
The Spot Laundromatというコインランドリーがシャワー室を併設しており、ここで洗濯・シャワー・スマホ充電ができる。両替機で紙幣を1ドル硬貨に両替できる。洗濯は1回5ドル、乾燥機が1回5ドル、シャワーは1分1ドル。使用後にシャワー室を自分で清掃するルールがあるのは厳しい。コインランドリーでの滞在時間だけでスマホやバッテリーの充電を完了させるのは難しかった。テント泊だとスマホの充電が大きな課題になるが、車内でスマホを充電できるUSBカーチャージャーを準備しており、これがたいへん役に立った。
ネットの情報によると、プール場でシャワーが浴びられたり、公立図書館やボルダリングジムでスマホの充電ができたりするようだが、今回は行っていないので確かめていない。
■反省点など
9月下旬のスコーミッシュは朝晩がやや寒く、ベストシーズンではなかったかもしれない。一日も雨で停滞せずに済んだのは運が良かったという他ない。
2人用テントで7泊過ごしたが、狭苦しくあまり快適でなかった。テントサイトが十分に広いので、各自テントを持参したほうが一人になる時間を確保できてストレス軽減に役立ったかもしれない。
今回は自炊して主にパスタを食べていた。朝食の調理に時間がかかり、せっかく早起きしてもクライミングを始める時間がいつも遅くなっていた。スーパーにくそでかいサンドイッチ(サブマリンサンドイッチ)が売っていたので、こういうもので手軽に済ませても良かったかもしれない。