思ったこと、考えたこと。

日々思ったことや考えたことを日記代わりに綴っていきます。がんばります

一人当たりGDP

日本の一人当たりGDPアメリカやドイツと比較されて、日本の低さがよく問題とされる。だが、一人当たりGDPが国ごとの産業構造や人口動態、福祉制度といった、労働環境の実質的な構成要素ではないような、マクロの経済状況に依存しない指標だと言えるものだろうか? もしそうだとすれば、1位のルクセンブルクや3位のマカオと比較して、こうした都市国家における高い労働生産性の源泉を国民性に支えられた労働慣習や法律で定められた労働規制のみに見出そうとする議論があってもよいはずである。なぜなら、労働一般について考えるときに、経済諸制度や物価、経常利益率のちがいを捨象して残るものは、各会社の職場で機能しているルールと力学がつくりあげる個別の環境だけになるからだ。もちろんそんな議論に意味はなく、「ドイツ人労働者の価値観は日本人よりもっと資本主義に向いているが、労働生産性に関する考え方はルクセンブルクの労働者の方が優れている」というような結論がいかに馬鹿げているかは指摘するまでもない。また、ドイツとルクセンブルクの一人当たりGPDの差異だけを検討することで、日本の一人当たりGDPの低迷の原因が突き止められるわけでもないだろう。このことが示唆するのは、一人当たりGDPというものは、なにか別の経済指標なり社会生活統計指標なりと組み合わせて解釈することで初めて意味をなす数字であるが、組み合わせるべきマクロの指標が必ずしも自明なものではないということである。

日本とドイツの一人当たりGDPが単純比較可能であるならば、なぜ、日本とルクセンブルクは比較可能でないのか?一人当たりGDPという指標とその算出方法は、この問いに対して答えるすべを知らない。