2017-10-22 ■ 読書 カザンザキス「その男ゾルバ」を読む。古代クレタ人の心の中に生きていた叙事詩や口承伝説が、クノッソス宮殿の優美な壁画や陶器に命を吹きこむと同時に、クレタの栄枯の歴史の断片がミノス王の物語やミノタウロス神話へとやがて受け継がれる。ちょうどそのように、俺の人生とかつて読んだ小説たちが、さながら考古学的な史実と神話の一節のような、密やかで美しい象徴と照応の関係を保つように。