思ったこと、考えたこと。

日々思ったことや考えたことを日記代わりに綴っていきます。がんばります

白人社会の法意識

「ヘルプ」を観た。いい映画だ。思わず涙ぐんでしまった。

エイビリーンは劇中でこう語る。

You not knowing that is what's scaring me the most. Scare me more than Jim Crow.

彼女が真におそれているのは、人種隔離政策ではなく、黒人が白人と対等に会話しているのを誰かに見られること、その他者の視線に晒されることが意味する事態に対して無自覚であるということだ(字幕では「視線を怖れている」」と訳されているが、精確ではない)。白人の雇い主の言うことに文句を言わず従い、ジム・クロウ法のもとで「黒人らしく」影のように生きているならば、誰もそんな黒人など気にも留めない。しかし、白人と対等に向かい合ったり、主人に口答えをして、白人社会から暗黙裡に要求された「黒人らしさ」の規範から逸脱するとき、白人社会は、ジム・クロウ法でさえ許さなかった弾圧をその黒人に対して許すだろう。エイビリーンは法を怖れるのではない。そうではなく、ときとして法をも越え出るような、白人社会の法意識をおそれているのだ。

この映画は、ソロモン・ノーサップの伝記的映画「それでも夜は明ける」とともに、当時の法意識や人種差別の雰囲気に飲みこまれ、しだいに肌の色そのものに対して苛立ってゆくかのような白人の意識の襞を描くことで、黒人差別の根源を探ろうとしている。