思ったこと、考えたこと。

日々思ったことや考えたことを日記代わりに綴っていきます。がんばります

重みの感情

歩荷訓練のために約30キロのザックを準備する。両手でショルダーハーネスをつかんで思い切りよく持ち上げ、かがんだ姿勢で太ももの上で支えるように持ち上げる。次に、素早くショルダーに片腕を通し、背を折り曲げてザックを背中にのしかからせる。一呼吸おいて、軽く跳び上がってザックの重みを空中に開放し、その瞬間にもう片方の腕をするりとショルダーに通す。ザックが重力に打ち負けるとき、それは俺の肩に食いこみ、俺を地べたに引きずり降ろそうと俺の背にしがみついてくる。これでまだ終わりではない。俺はもう一度小気味よく跳び上がり、ザックの重みを腰で支えられるようにその高さと位置を小刻みに調整する。背筋を伸ばして、ザックを背中に吸いつかせるかのように、ショルダーストラップを強く引き締める。肩がほどよく締めつけられて、たくましい男に両腕で抱きしめられた女の細い身体のようにあえなくきしむ。仕上げに、腰の骨にちょうど引っかかるようにヒップベルトを気合いを入れて締める。すると肩の食いこみはするりと解けて、ザックの重みは尻から大腿の裏、ふくろはぎへとじっくり伝わっていき、それはかかとで大地の重みとしてじかに感じるようになる。呻吟するかかとが次第に熱を帯び、熱が両脚を経て体幹をせり上がり腰を鷲づかみにする。ザックの重みと地面の反発力が激しく突っ張り合うところ、その挟み撃ちの場として俺の肉体は"熱的に"顕現する。このとき、俺は自由であるということの感情をこの上なく汲みつくせる気がするのだ。