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思ったこと、考えたこと。

日々思ったことや考えたことを日記代わりに綴っていきます。がんばります

東京国立博物館の古代ギリシャ展

三日間のセミナーに参加するため、出張で秋葉原へ行っていた。出張中、空いている時間に東京国立博物館で開催されている古代ギリシャ展に行く機会があった。ダイモーンの力を両眼に宿し、形而上の世界に思考の錨を沈めているかのようなアリストテレスハドリアヌスの頭像がきわめて印象的だった。ハドリアヌスとアンティノウスの二人の巨大な頭像が広間に並んで陳列されているのを眺めながら、俺はマルグリット・ユルスナールの「ハドリアヌス帝の回想」の一節を回想し、ハドリアヌスが何百万もの大理石の輝きを眼下に見下ろしつつ、アンティノウスに投げかけたという帝衣の深紅と、彼のうなじの薄い金色との対照とに思いを馳せていた。

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そして、密やかに愛を取り交わすかれら二人を横にして、おのれの才覚と美貌をもてはやす大人たちを冷笑の目つきをもって蔑むかのようにたたずむポリュデウキオン! ペトロニウスの「サテュリコン」に登場する、享楽にふけりながらも小賢しい修辞を操ることは忘れない青年の肖像はお前こそがふさわしい。

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だが、何よりも墓碑として捧げられた老夫婦のレリーフが美しかった。大理石の浮き彫りで描かれた女が着ている衣は艶やかに悠然と波うち、生身の腿が透き通るようにその肉感を湛えているので、俺は官能の嵐に飲みこまれて身動きが取れなくなり、眼球は凍結したようにこわばるばかりだった。