思ったこと、考えたこと。

日々思ったことや考えたことを日記代わりに綴っていきます。がんばります

ガリア戦記」を読む。カエサルはガリー人の中に生まれる突発的な反抗心とその武勇に頼みがちな性向に対して野蛮と名づけることで、逆に、みずからの約束を守る態度と誠意ある親好を非・野蛮=文明的価値のひとつに位置づける。かれにとってのガリア征伐および支配とはまず第一に、ローマ人が自負するところのこうした「文明的な」友情と誠意のもと、かれらに対しローマの権威を仰がせることを目的としていた。すなわち、ガリー人の虐殺とその抑圧支配にではなく、帝国の理念を自発的に捧げもつように仕向けることに目指すところはあったということだ。だがそれがカエサルによるローマ式の壮大な教化活動であったとしても、少なからずのガリー人は、連帯を阻害し、分断統治と内政干渉による屈辱を味わわせる侵略行為であると感じていたことは本書に記述されている通りである。

にも関わらずカエサルのガリー人の風習を見る目はきわめて公平であり、かれらが友好という名の軛をはねつけるさまを記述する箇所は透徹ですらある。ローマ的価値観に対する認識の非対称性への深い自覚のなかで、幾年にもわたるガリア討伐と平定に身を捧げるカエサルの心境とはいかなるものであったのか。これは私の手に負えない問いだろう。