思ったこと、考えたこと。

日々思ったことや考えたことを日記代わりに綴っていきます。がんばります

私は時をおいて小説を読み返すことがほとんどできない。一度読んだ小説はエクリチュールの薫香とでも呼ぶべき、彩られた心的態度とともに記憶の片隅に深く刻みつけられるので、たとえ大方のあらすじを忘れ去ろうとも文章の一節を読んだだけで、まるで一斉に開花を迎えた花畑が眼前に飛び出してくるかのように、蓄えられた記憶が爆発的に湧きだし、以後私は初対面であるかのようにその小説と語らうことはいっさい不可能となってしまう。そのとき私は、過去に私自身が配合し編み出した香気にすっかりつつまれるので、そこから無理に抜けだそうとすれば息を吸い込まずに花畑を駆け抜けねばならず、それが苦痛なのである。