俺の限界がたかだか後立山連峰3泊4日だということを認めるのはつらいことだ。俺はなにか人生において手形となるような経験を山で得たいのだ、たとえそれが死であっても。ある凝縮されたひとつの認識を生活のまるごとに投錨させて、この人生が、巨大な錨が海底に沈みこむときに響きわたる重苦しい残響となることを望む。
タイ人の謎英語
なにが「れったるー↓」だよ、"red color"だよ。アクセントでたらめなんだよ・・・他にも、
"method"「めたぁ↓」
"soldering"「そるだりー↑ん↓」
"ghost"「ごっど」
そういう発音かわいいんだけどさ、もうね、俺わかんないよ・・・
ダンスと「生い出ずる石」
タイ人のパーティに参加してだいぶ酒を飲まされた。始終ディスコで流れるような洋楽を爆音で流しながら食事をしているのでびっくりした。途中から電灯を暗くして、本当にディスコのようにみんなでダンスを始めたので(あまり踊ろうとしないタイ人もいたが)、気恥ずかしく感じる自分を鼓舞してダンスに参加した。
俺は自分に鞭打って奮い立たせるように、不器用ながらも、見よう見まねでさぞ楽しんでいるかのようにダンスをするのだが、こんなときに頭に浮かぶのが、カミュの短編小説「生い出ずる石」において描かれるヨーロッパ人の一技師ーー植民地において、原住民の男に代わって石を背に担い、重苦しく頭蓋にのしかかる石を慄える両腕で支えるひとりの男の姿であるとは。俺は他者と交わるときになんという悲痛な孤独を味わい、この大地を孤独に歩むときに、他者との連帯をなんと力強く感じ取ることか。
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最近は年齢がひとつ下のタイ人女性エンジニアとともに仕事を進めているのだが、英語でたがいに相談や質問をしたり、他愛ない会話をしているうちに、その女性に恋してしまった。その彼女から、日曜日にタイ人の飲み会に参加しないかと誘われて、舞い上がるほど喜んだ。俺はなんて惚れやすい性格なんだ・・・どうかしている。
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新製品をタイの工場で立ち上げるために現地のエンジニアやオペレータが数ヶ月来日しており、最近はかれらとともに仕事をすることが多い。